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本職は、企業や個人のお客様から依頼を受けてウェブサイトやグラフィックを作成するデザイナーですが、自分発信でモノづくりを行うために立ち上げたブランドが丸川商店です。 そこで、最初の素材は何にしようかと考えていたところ、僕と同じく三重県松阪市出身の妻との会話から「松阪木綿」というキーワードが出てきて、それから松阪木綿を使ったオリジナル商品を少しずつデザインしていくようになりました。 商品の魅力はどんなところでしょうか? 松阪木綿は、約500年の歴史を持つ、三重県松阪市の無形文化財です。昔と変わらず、現在でも天然の藍で染めて織り上げる「正藍染」の技法にて生産されています。 全盛期は江戸時代。かつて江戸の町では、三井高利(越後屋、のちの三越)や太田利兵衛(松坂屋)、小津清左衛門(現小津和紙)、長谷川次郎兵衛(丹波屋)など、二百軒ほどあった呉服屋の実に七割を占めた松阪商人の才覚とそれを織りあげる松阪の女性たちの美意識によって、当時の江戸の人口の半分に相当する年間五十数万反の売り上げを誇るほどの一大衣料革命を巻き起こしました。
松阪木綿の特徴である縦縞は「松坂嶋」とも言われ、現在でも、歌舞伎役者が縞の着物を着ることを「マツサカを着る」と呼ぶことからも、縞といえば松阪木綿が代表的な存在であったことがわかります。 気質や態度、身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があり、無駄に飾りたてず、派手に目立たぬことを「粋」と呼び、その「粋」を誇りとした江戸の庶民にとって、少し離れると地味な無地に見えるが、よく見れば繊細なすっきりとした縦縞が走る松阪木綿は、正藍染めの糸を使い、洗うほどに深みを増す藍の青さを連ねた縞模様と素朴な風合いとが相まって、まさに「粋」の象徴でありました。 現在の暮らしの中でも、その鮮やかな藍色と粋の精神は、何も色褪せておらず、むしろ、忘れた何かを思い出させてくれる、さらには、本来のあるべき姿に気づかせてくれるような、そんな風に、ますます輝きを増しているように、僕には見えます。 今後の展望を教えてください。
生産地である松阪に、ひと頃は千をも数えた織元ですが、現在はたったの一軒を残すのみ。この一軒だけで松阪木綿の全生産を支えています。 丸川商店では、この最後の織元と協力して、松阪木綿の継承と再興に取り組んでいます。 ありがたいことに、現在では国内のみならず、海外でもお取り扱いいただけるまでになりました。特に海外の方々の反応は、僕らの自信と励みのもとになっています。 普段の生活の中でも違和感なくお使いいただけるような商品作りを心がけ、より多くの方に松阪木綿の魅力を知っていただけるよう、試行錯誤を繰り返しながら今後も努力を続けてまいります。
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