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こうして徐々に販路を拡大していっていると、セレクトショップの店員さんから「能作で金属製の食器とか作ってみてはどうですか?」と声をかけてもらう機会があり、その何気ない一言がきっかけで、食器づくりを始めました。 しかし得意とする真鍮は食品衛生法上ダメ。ほかの金属で何かできないか、そう考えた時に錫に行き着きました。 錫合金の食器は世の中にあるが錫100%の食器はない。ならば作ってみるか。こうして錫100%の食器作りがスタートしました。 商品を開発されるに当たってご苦労された点などありましたでしょうか?また魅力も教えてください。
柔らかいという錫の特性から削ったり、研磨したりすると商品自体が曲がってしまいます。そこでうちの得意とする鋳造技術が生きてきます。鋳造技術を用いれば型どおりの商品が出来上がる。 ひたすらに型の精度を上げる日々でした。商品の完成度は上がる中、商品として使っていくとどうしても曲がってしまう欠点をどうすれば良いのか考え続けました。 そんな時に、プロダクトデザイナーの小泉誠さんと出会いました。彼はうちの商品を見て、「曲がるのなら曲げて使えばいいじゃないですか。温かみや味があって面白いと思いますよ」と言われました。 まさに目から鱗の発想で、これだ!と思い、曲げる楽しみを加えた錫100%の商品開発が始まりました。このように伝統産業の技術を用いて新たなものを創造することがこの仕事の魅力だと思っています。 では最後に今後の展望をお願いいたします。
どこの産地にも見られる現象ですが、ライフスタイルの変化を捉えた商品開発がうまくいかず、技術はあるけどそれを商品に生かしきることができていないメーカーが数多くあります。 ほんの10年前までは産地の一メーカーだった当社が現在は徐々にですが、いろいろな方に知っていただけるようになりました。最近ではどう商品を広げていけばいいのか相談に来る同業者も現れてきています。 私たちが得た知識を地域に還元し、地域全体が以前の活気を取り戻せるようにこれからも精進していきたいと思います。
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