私がこの仕事に就いたきっかけは、高校生時代に父親が病気で入院したことです。 鍛冶、刃付け、問屋などの分業制で成り立っている堺刃物の業界の中で、父親の後を継ぎ、包丁の生地を磨いて切れる状態に仕上げる刃付けの仕事をしています。 子供の頃は、学校が終われば家に帰って家業を手伝うのが当たり前の時代でしたが、家業である刃付けの仕事が嫌いで仕方ありませんでした。 刃付けの仕事を始めた頃もその思いは変わることなく、本当にこの仕事をしたいのかと自問自答を繰り返される日々を過ごしました。 しかし、仕事を続けていく中で同業者の仲間達、自分の研いだ包丁で仕事をする料理人や魚屋などのお得意先の人達に出会い刺激を受けて、この仕事を頑張ろうと思うようになったとのこと。 刃物の生産地は日本全国にあり、堺以外にも関(岐阜県)、武生(福井県)、三木(兵庫県)などが有名な生産地。 生産地によって刃物の性質の違いがあり、また、刃物の種類も異なる。 堺では主に料理人や魚屋が使用するプロ用の刃物を製作しており、そのシェアは全国の約70%から80%を占めるほど。 魚のお造りや野菜の飾り切りなどに見受けられるように、日本料理は味はもちろんのこと、見た目の美しさも要求されます。 堺はその要求に応えれる刃物を作るためにその技術を今もなお洗練し続け、堺刃物の歴史は600年にもなります。 現代社会では、味噌汁ひとつにしても、中に入れるねぎは自分で切らなくても刻みねぎがスーパーなどで容易に手に入れることができる時代。 しかし、いい刃物でねぎを切ると、ねぎの断面が潰れずに切れ、掴んでもべたべたすることはなくふわっとし、食べたときの食感はスーパーの刻みねぎでは味わえません。 家庭で調理する方が昔に比べると減ったこの時代に、自分で調理する方が一人でも増えて欲しいと思っています。 |





