彫金,彫金職人



彫金,彫金職人

祖父と父はニ代で仏壇の錺(かざ)り金具職人をしていました。

祖父が京都で修行し、地元滋賀で仕事を始めました。父はその後を継ぎましたが、時代が進むにつれ仏壇業界は衰退し、仕事量は減少して行きました。そんな状況だったので父も私に家業を継ぐ事を勧めることも無く、私自身も継ぐつもりは無かったのです。
だから名古屋の大学に進学し、生物・化学を学び地元の樹脂加工会社に就職しました。

就職して三年、不景気による業績不振・リストラで肩叩きをされる先輩の様を見てこのままこの会社に居ても先が見えないと思うようになりました。

その様な中でふと家業に目を向けると、何百本もの鏨(たがね)を使い分け、全て手作業で一枚の板金を色々な製品に仕上げて行く技術。日本古来の伝統的技術とはいえ仕事量が減りこの技術では食べて行けなくなった職人の減少、高齢化。そんな現状を知りました。

廃れさせるにはあまりにもったいない技術。一度途絶えると、この何百本もの鏨の使い方は誰にも分らなくなりニ度と復活する事はないだろうと思いました。どうせ先の見えない職であるなら、リストラにおびえて働くより希少となった技術を身につけ自分の力で何かしてみよう。それで駄目ならまた考えれば良い。と会社を退職し父に教えを請いました。両親とも心のそこでは私と同じく無くすには惜しい技術と思っていたようで喜んだ様子でした。

それから七年が経ち、相変わらず仏壇業界は若い世代の仏壇離れと中国製品の輸入による価格の暴落により衰退の一途をたどっています。私は仏壇の錺り金具職人として食べて行く事は非常に困難です。

ただ、その技術を応用して何か別のもので世間の皆様に昔ながらの日本の伝統技術を見て欲しい。電気鋳造でもなく鋳物又はプレス加工品でもない、金槌(かなづち)と鏨で一枚の平らな板地金を打出したり、削ったり、彫ったり、整えたりしながら精密な模様を彫り出して行く事ができるという事を知って欲しい。そう思い今、銀装飾品等を手がけています。

彫りの技法は、数本の鏨のみで日本の水墨画風に柄を彫っていく"片切り彫り"。数百からの鏨を使い分け地金の裏から鏨で打出し立体感出して柄を彫る"打出し地彫り"。そして打出す事無く地金の本来の厚みの中で彫り下げて柄の上下をつけて表現する"薄肉地彫り"等を得意としていますが、御要望に応じてその他の彫りも用います。

打出し地彫りは仏壇の金具に多く用いられます。薄肉地彫りは京都のお茶席の金具や違い棚の金具に使われる様なしっとりと落ち着いた彫り技法です。打出し地彫りとは違い彫り下げるだけで柄を造るので失敗は効きません。

手彫りである故、手間が掛かり価格が上がってしまう事はこちらとしても心苦しいのですが、決して暴利な事はしていません。それを分ってもらえるだけの技術と魅力を表現できる様、また、「アーティストにはならず職人として仕事をする」という事を常に心に持ちながらこれからも日々精進、努力をして行く所存です。

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三甲工房

打ち出し地彫りという手法により、銀板を後ろからたがねで打ち出すことで柄を作り出す。かねてから職人をかかえこむ業界のやり方に反し、自らがクリエイティブな商品を発信することで価値を創造している。



彫金小物
彫金和小物

20,000円~